【独自調査】「建設工事を取り巻く現状」に、建築主の約6割が危機感

2025年5月13日 リリース
■建築主の約6割が、建設工事を取り巻く現状に危機感
■建築主の危機感の要因は、建築費用の高騰

BuildApp(ビルドアップ)で建設DXに取り組む野原グループのBuildApp総合研究所(所在:東京都新宿区、代表:山梶真司)は、昨今の建設工事費高騰の影響から、都市の再開発や公共施設の工事案件で計画見合わせや着工遅れが出始めたり、多くの総合建設会社(以下、ゼネコン)、サブコン(専門工事会社を含む施工会社)が赤字プロジェクトを抱えていると言われています。また、BuildApp総合研究所が2024年12月18日付けに発表した調査結果から、施工BIMにおけるフロントローディングの実現に必要なのは「発注者(建築主)の意識変容」との回答が最多の39.3%でした。そこで、BuildApp総合研究所は、建設工事の発注会社に勤務する全国の20代~70代の420名を対象に、建設工事を取り巻く現状(設計変更・工事契約の在り方)等への意識調査を行いました。

調査結果からは、建設費用の高騰を背景に、建築主(工事発注会社)の約6割が建設工事を取り巻く現状に危機感を抱いていることがわかりました。また、今後、建設プロジェクトの品質を落とさず、計画通りに実行(設計・着工・竣工引渡し)するためには、「BIMの活用による設計・施工プロセスの生産性向上」が必要との回答が最多の33.6%でした。

<調査実施概要>

  • 調査元:BuildApp総合研究所
  • 調査期間:2025年3月21日~3月31日
  • 調査対象:建設工事の発注会社に勤務する全国の20代~70代
  • 回答数:420人
  • 調査方法:インターネット調査(ゼネラルリサーチ株式会社)

調査結果の主なトピックス

1.建設工事を取り巻く現状への危機感(単一回答)

  • 建設工事を取り巻く現状の危機感について質問したところ(単一回答)、1位「やや危機感がある(39.5%)」、2位「かなり危機感がある(19.5%)」、3位「わからない(16.4%)」、4位「あまり危機感はない(14.8%)」、5位「ほとんど危機感はない(9.8%)」との結果となりました。 このことから、建築主(工事発注会社)の約6割にあたる59%が危機感を抱いていることがわかりました。
  • 会社種類別に「建設工事を取り巻く現状の危機感」について結果を見てみると、建設コンサルタント(n:140)が他に比べて危機感を抱いている割合が高いことが分かります。
■会社種類別_建築主の「建設工事を取り巻く現状への危機感」

2.建設工事を取り巻く現状に危機感を抱く要因(複数回答)

■危機感を抱く要因のトップ3は建築費用の高騰に関するものがランクイン
  • 建設工事を取り巻く現状に、「やや危機感がある(39.5%)」、「かなり危機感がある(19.5%)」と回答した248名に、危機感を抱く要因を質問したところ、1位「労務費の増大(51.2%)、2位「物流コストの増大(45.2%)」、3位「建設資機材価格の高騰(44.8%)」、4位「現場作業員数の減少(人手不足)(33.9%)」、5位「工期遅延(22.6%」との結果になりました。 上記から、建築主(工事発注会社)の「建設工事を取り巻く現状への危機感」の背景には建設費用の高騰があると推測できます。

3.建設プロジェクトの品質と計画通りの実行に必要なこと(複数回答)

■建築主が選ぶ「建設プロジェクトの品質と計画通りの実行に必要なこと」
  • 「今後、建設プロジェクトの品質を落とさず、計画通りに実行(設計・着工・竣工引渡し)するために必要だと思うことを教えてください(複数回答可)」と質問したところ、1位「BIMの活用による設計・施工プロセスの生産性向上(33.6%)」、2位「発注者・設計者・施工者を交えた、慣習や建設プロセスの根本的な見直し(31.4%)」、3位「働き方改革を前提とした適正な工期設定(29.3%)」でした。
  • 会社種類別に「建設プロジェクトの品質と計画通りの実行に必要なこと」について結果を見てみると、建築主全体の結果に比べて、建設コンサルタント(n:140)では「発注者・設計者・施工者を交えた、慣習や建設プロセスの根本的な見直し(44.3%)」が約13ポイント高く、流通/ 電力会社/ 大学で不動産・設備投資・建築関連業務(発注業務)に携わっている方(n:60)では「働き方改革を前提とした適正な工期設定(53.3%)」が24ポイントも高いことが分かります。
■会社種類別_建築主が選ぶ「建設プロジェクトの品質と計画通りの実行に必要なこと」

4.工事発注時のBIM要件(EIR)提示の実態(複数回答)

■建築主による工事発注時のBIM要件(EIR)提示の実態
  • 「建設プロジェクトの品質と計画通りの実行に必要なこと」の1位に「BIMの活用による設計・施工プロセスの生産性向上(33.6%)」が上がっていたことから、「工事発注者として工事受注者に求める詳細なBIM要件をまとめた発注者情報要件(EIR:Employer’s Information Requirements)の提示実態」について質問したところ、最多が「EIRを初めて聞いた(31.2%)」、次いで「EIRの提示はしない(19.5%)」との結果になりました。
  • 建設プロジェクトを巡っては、生産性向上のために発注者と受注者のBIM活用等に関する円滑な意思疎通の促進、発注者の主体的な関与がBIM活用促進の鍵になると言われています。この点、工事会社でのBIM活用は施工フェーズにも拡大していますが、建築主(工事発注者)においてはEIRの浸透には課題があると言わざるを得ません。
  • 「3.今後の建設プロジェクトに必要なこと」の1位に「BIMの活用による設計・施工プロセスの生産性向上(33.6%)」が上がっていることも考慮すると、建築主においては設計事務所・工事会社への「EIR(BIM要件)」が進んでおらず、BIM活用は設計事務所・ゼネコン以下の工事受注会社に頼る部分が大きい現状も伺えます。
  • 一方で、「EIRほどではないが、BIM活用を発注条件としたことがある(16.2%)」または「EIRを受注者に提示したことがある(14.0%)」との結果から「工事発注時にBIM要件を提示したことがある方」は約3人に1人にあたる30.2%で、「今後、EIRの提示を予定している(11.7%)」または「EIRの提示を検討している(7.4%)」との結果から「EIRの提示に前向きな方」は約5人に1人にあたる19.1%であることがわかりました。
  • 会社種類別に「工事発注者として工事受注者に求める詳細なBIM要件をまとめた発注者情報要件(EIR)の提示実態」について結果を見てみると、不動産デベロッパー(n:80)では、「工事発注時にBIM要件を提示したことがある方」(「EIRほどではないが、BIM活用を発注条件としたことがある(20.0%)」または「EIRを受注者に提示したことがある(22.5%)」)、「EIRの提示に前向きな方」(「今後、EIRの提示を予定している(18.8%)」または「EIRの提示を検討している(8.8%)」)ともに割合が他の会社に比べて高い傾向にあり、「EIRの提示」をけん引しているものと思われます。 一方で、流通/ 電力会社/ 大学で不動産・設備投資・建築関連業務(発注業務)に携わっている方(n:60)では、「EIRを初めて聞いた(36.7%)」が建築主全体の結果よりも5.5ポイント高く、「EIRの提示はしない(35.0%)」に至っては建築主全体の結果の約2倍もの数値になっています。
■会社種類別_建築主による工事発注時のBIM要件(EIR)の提示の実態

5.EIRの提示をしない理由

■建築主が「EIRを提示しない理由」
  • 「EIRの提示はしない」と回答した82名に理由を質問したところ、1位「BIM活用のメリットが感じられないから(74.4%)」、2位「自社にBIMに詳しい人材がおらず、自社でEIRを整理できないから(20.7%)」、3位「EIR提示の必要性を感じないから(BIMがなくても建物は完成するから)(4.9%)」でした。
  • BuildApp総合研究所が、2025年4月24日付けで発表した「建設DXの現状」に関する調査結果によれば、ゼネコンやサブコンといった工事会社でのBIM活用は施工フェーズにも拡大していましたが、「EIRの提示をしない」理由を鑑みると、建築主(工事発注会社)を含めた建設産業全体でのBIM活用を加速させるには、建築主のBIMへの理解深耕が必要と言えます。

6.建築主の「工事発注者としての設計変更」に関する考え(単一回答)

■建築主の「工事発注者としての設計変更」に関する考え
  • 「現在、建設プロジェクトを取り巻く環境が厳しさを増すなか、発注者として設計変更に関するお考えに最も近いもの一つを教えてください」と質問したところ、リスク負担を前提に設計変更を肯定する考え(1位と2位の合算)が約45%に上りました。
  • 会社種類別に「設計変更」に関する考えを見てみると、建築主全体の結果と比較して顕著だったのは、次の二点でした。
    1)官庁で不動産・設備投資・建築関連業務(発注業務)に携わっている方(n:30)において、「企画・設計段階で建物の完成イメージの精度が上がれば、設計変更は発生しない」が36.7%(全体結果よりも17.9ポイント高い)でした。
    2)流通/ 電力会社/ 大学で不動産・設備投資・建築関連業務(発注業務)に携わっている方(n:60)では、「受発注者双方が設計変更の理由に応じたリスクを負担するのであれば、今後も受発注者協議の上、設計変更をすればよい」が40.0%で、建築主全体の結果の約2倍もの数値になっています。
■会社種類別_建築主の「設計変更」に関する考え

7.建築主の「工事発注者としての工事契約の形態」に関する考え(単一回答)

■5.建築主の「工事発注者としての工事契約の形態」に関する考え
  • 「現在、建設プロジェクトを取り巻く環境が厳しさを増すなか、発注者として建設工事契約の形態に関するお考えに最も近いもの一つを教えてください」と質問したところ、1位は 「これまで契約形態を意識したことがない(19.8%)」でした。この点、政府内では「新たな事業ニーズや多様なプロジェクトに対応した適切な契約方式」について議論されていますが、調査結果からは、建築主の約2割が契約形態を意識したことがない実態が浮き彫りになりました。
  • 2位 「受発注者双方で設計変更による工期・費用増のリスクを負担する契約形態を提案してほしい(19.5%)」、3位 「プロジェクトに最適な契約形態であれば、ランプサム以外を採用したい(19.3%)」との結果からは、従来のランプサムに限定せず「工事受注会社からの契約形態の提案」を望む声が上がっていると言え、注目したいと考えます。
  • 会社種類別に「建設工事契約の形態」に関する考えを見てみると、建築主全体の結果と比較して顕著だったのは、次の二点でした。
    1)流通/ 電力会社/ 大学で不動産・設備投資・建築関連業務(発注業務)に携わっている方(n:60)では、「ランプサムであれば設計変更をしても受注会社が契約総額内で収めてくれることが多いので今後もランプサムを継続したい」が35.0%で、建築主全体の結果の約2倍以上の数値になっています。
    2)大規模商業用不動産オーナー(賃貸物件、小売店舗等を除く)(n:40)では、「受発注者双方で設計変更による工期・費用増のリスクを負担する契約形態を提案してほしい」が30.0%(全体結果よりも10.2ポイント高い)でした。
■会社種類別_工事契約の形態に関する考え

8.建築主が「建設プロジェクトで最重視すること」(複数回答)

■建築主が「建設プロジェクトで最重視すること」
  • 「建設プロジェクトで最も重視する要素」を質問したところ(最大3つまで選択可)、1位「建物の品質(強度や耐震基準など)(36.9%)」、2位「工事契約金額の多寡(契約時の建設費用)(25.5%)」、3位「建設中に事故が発生しないこと(安全)(21.2%)」、4位「設計事務所、受注会社への一任ができるか(20.5%)」、5位「建物の意匠性(デザイン・設計)(19.8%)」との結果でした。
  • 会社種類別にみると、不動産デベロッパー(n:80)において「建物の品質(強度や耐震基準など)」が52.5%と顕著(全体結果よりも15.6ポイント高い)で、流通/ 電力会社/ 大学で不動産・設備投資・建築関連業務(発注業務)に携わっている方(n:60)においては「環境への負荷が少ないこと」が38.3%(全体結果の約2倍)で最重視されていることがわかりました。
■会社種類別_建築主が建設プロジェクトで最重視すること

9.建築主が思う「建設プロジェクトを支えてきた要素」(複数回答)

■7.建築主が思う「建設プロジェクトを支えてきた要素」
  • 「これまで、建設プロジェクトの計画通りの実行を支えてきた要素として当てはまるものを教えてください(最大3つまで選択可)」と質問したところ、1位「熟練作業員の技術力(32.6%)」、2位「サブコン・専門工事会社の施工力(26.2%)」、3位「設計事務所の設計力(23.6%)」、4位「長時間労働(22.4%)」、5位「工事受注会社(ゼネコン)の総合力(21.7%」との結果でした。
  • 会社種類別に結果をみても、全体の結果と概ね同じで、「熟練作業員の技術力」や「サブコン・専門工事会社の施工力」といった工事現場の最前線に関連する要素の割合が高い傾向がうかがえました。
■会社種類別_7.建築主が思う「建設プロジェクトを支えてきた要素」

調査結果の詳細

別紙「結果詳細_建築主への建設工事に関する意識」をご参照願います。

BIM設計-製造-施工支援プラットフォーム「BuildApp」について ※登録商標取得済み

「BuildApp(ビルドアップ)」は、設計事務所やゼネコンが作成したBIM設計データをより詳細なデータに置き換え、各建設工程で必要なデータとして利活用し建設工程全体の生産性向上を実現するクラウドサービスです。設計積算から製造・流通・施工管理・維持管理までをBIMでつなぐ複数のサービスにより、各プレイヤーに合わせたサービスを提供します。そして、設計・施工の手間・手戻りをなくし、製造・流通を最適化して、コスト削減と廃棄物・CO2削減に貢献します。
「BuildApp」は、建設サプライチェーンの抜本的な効率化と未来へ繋がる成長をサポートし、皆さまと一緒に建設業界をアップデートしていきます。

私たちがBuildAppで実現したいこと

  • BIM起点のデータで建設関係者を繋いで連携を生む
  • 工程の可視化や業務の自動化により業界内の無駄を解消する
  • DX による生産性向上や廃材・CO2排出量の削減を目指す建設企業とともに、サプライチェーン を変革し、「建設DXで、社会を変えていく」

BuildAppの新サービス「BuildApp 内装 建材数量・手配サービス」が2月より商用提供開始

「BuildApp 内装 建材数量・手配サービス」は、建材発注数量の算出や施工情報の自動アウトプットができる内装仕上工事向けのサービスです。

BIMで内装仕上工事に必要な建材手配に関わる業務を効率化し、無駄を省いた効率的な資材管理を実現します。 2025年2月3日より商用提供を開始し、「建築プロジェクトでBIM化が遅れている内装仕上工事」を情報マネジメントの観点から変革する第一歩を踏み出しました。

お問い合わせ先

BuildApp WEBhttps://build-app.jp/
フォーム入力https://build-app.jp/contact/
電話03-4535-1158

参考

  • BIM(ビム)とは
    国土交通省によれば、「Building Information Modelling」の略称で、コンピュータ上に作成した3次元の形状情報に加え、室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ等、建築物の属性情報を併せ持つ建物情報モデルを構築することです。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
    経済産業省の定義によれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指し、単なるデジタル活用とは区別されています。
  • 省人化とは
    一般的に、単位経済活動あたりの労働時間や人手を減少させること。単位仕事あたりの人間の労力を減少させる省力化とは違う、と言われています。
  • サプライチェーンとは
    商品や製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れのことをいいます。
  • EIR(Employer Information Requirementsの略称)とは
    建築工事における、発注者情報要件のことを言います。詳しくは国土交通省ホームページまたはBuildApp Newsの用語解説をご覧ください。

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