【独自調査】フロントローディングの実現に必要なのは「発注者の意識変容」が最多の39.3%
BuildApp(ビルドアップ)で建設DXに取り組む野原グループのBuildApp総合研究所(所在:東京都新宿区、代表:山梶真司)は、建設産業内における施工BIM における「フロントローディング」の重要性の高まりを背景に、全国の20代~70代の建設産業従事者1,000人を対象にフロントローディングに関する意識等の調査を行いました。
フロントローディングとは
フロントローディングとは、「プロジェクトの早い段階で建築主(発注者)のニーズをとりこみ、設計段階から建築主・設計者・施工者が三位一体でモノ決め(合意形成)を進め、後工程の手待ち・手戻りを減らすことにより、全体の業務量を削減し、適正な品質・コスト・工期をつくり込むこと」を言います。フロントローディングは、建設産業の持続可能性に不可欠な「生産性向上」と密接な関係があると言われています。【参考】一般社団法人 日本建設業連合会による定義
<調査実施概要>
- 調査元:BuildApp総合研究所
- 調査期間:2024年11月13日~11月19日
- 回答数:1,000人
- 調査対象:全国の20代~70代の建設産業従事者1,000人
- 調査方法:インターネット調査(ゼネラルリサーチ株式会社)
調査結果の主なトピックス
1.フロントローディングの意義・内容の理解と組織内での浸透度合い
- フロントローディングの意義・内容を理解している方は、全体の48.8%でした。
- フロントローディングの意義・内容を理解していると回答した488名のうち、所属組織内でもフロントローディングの重要性が「浸透している(24.6%)」または「一部、浸透している(56.1%)」との回答は合計80.7%に上りましたが、フロントローディングを実施したことがある方は29.9%にとどまりました。
2.フロントローディングのメリットや効果 (フロントローディングを実施したことがあると回答した146名)
- 「フロントローディングの実施で感じたメリットや効果」(最大3つまで選択可)の1位は「設計変更に伴う手間やコストの減少(生産性向上)(69.2%)」でしたが、従事業務によって1位は異なる結果が得られました(詳細はリリースPDFをご覧ください)
- 「フロントローディングの取組みで、最もその効果を感じた取組み」は、1位「設計段階からの発注者・設計者・施工者による合意形成(50.0%)」、2位「BIM活用(36.1%)」、3位「設計者と施工者の連携(13.9%)」でしたが、従事業務別では各項目の回答割合に違いが見られました。また、会社種類別にみると、「BIM活用」が「不動産デベロッパー(n:11)」で63.6%、「設計事務所(n:33)」で60.6%と突出した結果だったことから、発注者に近い会社では「BIM活用」がフロントローディングのメリットや効果に強い影響があると推測できます。
3.フロントローディングの実現に必要だと思うもの
- 「フロントローディングの実現に必要だと思うもの」は、1位「発注者の意識変容(設計変更には工期延長・費用増が必須であるとの正しい認識)(39.3%)」、2位「設計者と施工者の連携(36.7%)」、3位「発注者による設計変更自由な慣習の廃止(31.0%)」でした。
BuildApp総合研究所 総評
調査結果からは、フロントローディングの意義と重要性の理解は進んでいるものの、実際に実施できずにいる現状が浮き彫りになりました。また、「フロントローディングの実現に必要だと思うもの」には発注者に関わる項目に多くの回答が集まりました。
BuildApp総合研究所では、発注者に変更リスクがなく受注者である元請(ゼネコン)以降がリスクを負うという従来の建設プロジェクトの在り方は、現代日本の状況に鑑みると持続可能とはいえず、今後は、発注者も巻き込んだ意識変容、慣習の見直しなどを建設産業全体で取り組む必要があると考えます。
調査結果詳細|フロントローディングに関する意識等の調査
1.フロントローディングの意義・内容の理解と組織内での浸透度合い
- フロントローディングの意義・内容を理解している方は、全体の48.8%
- フロントローディングの意義・内容を理解していると回答した488名のうち、所属組織内でもフロントローディングの重要性が「浸透している(24.6%)」または「一部、浸透している(56.1%)」との回答は合計80.7%。
- フロントローディングの意義・内容を理解していると回答した488名に、フロントローディングの実施状況を尋ねたところ(単一選択)、「実施したことがある」との回答は29.9%で、「今後、実施する予定」との回答が33.0%。
2.フロントローディングのメリットや効果 (フロントローディングを実施したことがあると回答した146名)
- 「フロントローディングの実施で感じたメリットや効果」(最大3つまで選択可)の1位は「設計変更に伴う手間やコストの減少(生産性向上)(69.2%)」、2位「工期短縮(47.9%)」、3位「品質向上(37.0%)」。
- 事業務別に、それぞれの項目についてみてみると、「設計変更に伴う手間やコストの減少(生産性向上)」は専門工事(n:17)で88.2%、「工期短縮(47.9%)」は施工(n:39)で61.5%、「品質向上(37.0%)」は施工(n:39)で56.4%と、全体数値に比べて突出して高い結果だった。
- トップ3の圏外であった「BIM活用による円滑な情報マネジメント」も、施工管理(n:48)で47.9%、専門工事(n:17)で47.1%と、全体数値に比べて突出して高い結果だった。
- 「フロントローディングの取組みで、最もその効果を感じた取組み」は、1位「設計段階からの発注者・設計者・施工者による合意形成(50.0%)」、2位「BIM活用(36.1%)」、3位「設計者と施工者の連携(13.9%)」。
- 従事業務別では、「設計段階からの発注者・設計者・施工者による合意形成」は設計(n:76)で59.2%と専門工事(n:17)で58.8%、「BIM活用」は営業(n:49)で44.9%、と全体数値よりも突出して高い結果だった。
- 会社種類別にみると、「BIM活用」が「不動産デベロッパー(n:11)」で63.6%、「設計事務所(n:33)」で60.6%と突出した結果だったことから、発注者に近い会社では「BIM活用」がフロントローディングのメリットや効果に強い影響があると推測できます。
3.フロントローディングの実現に必要だと思うもの
- 「フロントローディングの実現に必要だと思うもの」は、1位「発注者の意識変容(設計変更には工期延長・費用増が必須であるとの正しい認識)(39.3%)」、2位「設計者と施工者の連携(36.7%)」、3位「発注者による設計変更自由な慣習の廃止(31.0%)」。
- カテゴリに分けて結果を整理してみると、発注者に関する事項の総計が多いことが分かる。
– 「発注者による設計変更リスクの負担(28.2%)」
– 「発注者による設計変更自由な慣習の廃止(31.0%)」
-「発注者の意識変容(設計変更には工期延長・費用増が必須であるとの正しい認識)(39.3%)」
- 従事業務別に見ても、発注者に関する事項(グラフの青系の要素)の総計が多いことが分かる。
- 会社種類別に見ると、項目ごとに特色のある結果となっており、「発注者による設計変更リスクの負担」は設計事務所(n:159)で35.2%、スーパーゼネコン(n:62)で35.5%、準大手・中堅ゼネコン(n:79)で34.2%、サブコン(n:60)で31.7%、と全体数値(28.2%)よりも突出している。
BuildApp総合研究所について
BuildApp総合研究所は、建設産業におけるデジタル技術の活用とサプライチェーンの変革を推進・啓蒙するため、2024年12月に設立された任意団体です(代表:山梶真司、野原グループ株式会社グループCSMO)。
主な活動内容は、建設DXやデジタルツールの活用方法に関する情報発信です。
施工プロセスの情報革新と工業化に取り組み、社会と未来への貢献を目指して、総合建設会社(ゼネコン)、専門工事店、建材メーカー、学識有識者など、あらゆる建設プレイヤーと連携してまいります。
BIM設計-製造-施工支援プラットフォーム「BuildApp」について ※登録商標取得済み
「BuildApp(ビルドアップ)」は、設計事務所やゼネコンが作成したBIM設計データをより詳細なデータに置き換え、各建設工程で必要なデータとして利活用し建設工程全体の生産性向上を実現するクラウドサービスです。設計積算から製造・流通・施工管理・維持管理までをBIMでつなぐ複数のサービスにより、各プレイヤーに合わせたサービスを提供します。そして、設計・施工の手間・手戻りをなくし、製造・流通を最適化して、コスト削減と廃棄物・CO2削減に貢献します。
「BuildApp」は、建設サプライチェーンの抜本的な効率化と未来へ繋がる成長をサポートし、皆さまと一緒に建設業界をアップデートしていきます。
私たちがBuildAppで実現したいこと
- BIM起点のデータで建設関係者を繋いで連携を生む
- 工程の可視化や業務の自動化により業界内の無駄を解消する
- DX による生産性向上や廃材・CO2排出量の削減を目指す建設企業とともに、サプライチェーン を変革し、「建設DXで、社会を変えていく」
BuildAppのお問い合わせ先
BuildApp WEB | https://build-app.jp/ |
フォーム入力 | https://build-app.jp/contact/ |
電話 | 03-4535-1158 |
関連リンク
- BIM設計-製造-施工支援プラットフォーム「BuildApp」WEB
これまでの調査結果一覧
- 【独自調査】2024年4月以降、「施工業者、職人の確保が難しくなった」との回答が23.3(2024/12/12))
- 【独自調査】首都圏の内装仕上げ工事業、「適正工期への見直しの動き実感せず」と6割が回答(2024/6/28)
- 【独自調査】現場所長、4月からの残業規制開始も「働き方はかえって厳しくなる」が4割(2024/3/28)
- 【独自調査】デジタル化による生産性向上、「施工・専門工事」での遅れが深刻化(2024/3/21)
- 【独自調査】建設現場の痛みは「週末にも働く(工期順守と厳しい工程管理)」が5割(2024/2/27)
- 【独自調査】建設2024年問題 、「人手不足と採用の改善」への期待は1割にも満たず(2024/2/19)
- 【独自調査】建設産業の最大課題は人材不足(63.0%)、昨年より深刻さ増す(2024/2/9)
- 【建設現場の意識調査】現場監督・所長の65.5%は、デジタル化未対応による仕事減少に不安(2023/5/17)
- 【建設業界従事者のデジタルツール意識調査】デジタル未対応による将来の仕事への不安がある方は63.4%(2023/4/13)
- 【建設業界従事者の建設DX意識調査】進まぬデジタル化の実態は「施工・専門工事」「施工管理」にあり(2023/4/6)
- 【建設業界従事者の業界イメージ調査】建設業界人が思う最も深刻な課題は「人手不足」56.5%(2023/3/14)
- 【建設DX実態調査】建設DXの推進はパートナーとの連携がカギ(2022/10/28)
- <建設DX実態調査)競合のデジタル化が自社のDX推進の起爆剤に(2022/9/30)
- <建設DX実態調査>建設DXのカギは、DX推進部門との関係性強化とBIM利用(2022/8/30)
- <建設DX実態調査>図面のデジタル化は建設プロセス全体に影響、多用途でのニーズが判明(2021/9/9)
- <建設DX実態調査>業界全体のデジタル化は進行、プロセス別では格差も(2021/8/23)
- 【続報】設計士の本音調査 約5割の設計士が「“図面に落とし込む建材情報の収集”を効率化したい」と回答 ~デジタル化とBIMの重要性~(2019/10/23)
- 設計士の本音調査を実施 6割以上が「発想のための時間を”業務時間外”で確保している」と回答、業務の効率化には「デジタル化」を期待(2019/9/25)
参考
- 施工BIMとは
一般社団法人 日本建設業連合会の定義によれば、「施工者と専門工事会社間で実施するコーディネーション業務(すり合わせ)」を指します。
【参考】「施工BIMのインパクト2024」内、日本建設業連合会 建築生産委員会 BIM部会長曽根 巨充氏の発表資料「施工BIMの最新動向2024」 - フロントローディングとは
「プロジェクトの早い段階で建築主(発注者)のニーズをとりこみ、設計段階から建築主・設計者・施工者が三位一体でモノ決め(合意形成)を進め、後工程の手待ち・手戻りを減らすことにより、全体の業務量を削減し、適正な品質・コスト・工期をつくり込むこと」を言います。フロントローディングは、建設産業の持続可能性に不可欠な「生産性向上」と密接な関係があると言われています。 - DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
経済産業省の定義によれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指し、単なるデジタル活用とは区別されています。 - サプライチェーンとは
商品や製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れのことをいいます。
資料
本件に関する問い合わせ
お問い合わせ
【本件に関する報道関係者からの問合せ先】
野原グループ株式会社
マーケティング部 ブランドコミュニケーション課(担当:齋藤・萩谷)
E-Mail:nhrpreso@nohara-inc.co.jp