先進建築手法とデジタル技術の採用で、2ヶ月の工期短縮と省人化を実現

2024年8月30日 リリース
■CFS建築で2ヶ月の工期短縮_医療法人社団 新虎の門会酒々井虎の門クリニックの新健診棟(2024年4月21日オープン)

 BuildAppで建設DXに取り組む野原グループ株式会社は、認定医療法人社団新虎の門会 酒々井虎の門クリニック(所在:千葉県印旛郡酒々井町、院長:大前利道)を発注者とする「健診棟増築工事」(概要は次表の通り)において、自社のリノベーションカンパニーが株式会社古谷野工務店(所在:東京都板橋区、代表取締役:古谷野 裕一)および一般社団法人日本CFS建築協会(所在:東京都豊島区、代表理事:脇田 健裕)とともに、医療施設建築に、DfMA の思想を汲む先進建築手法である「モジュール建築」の一つである「CFS建築」(別紙に詳述)を採用し、在来工法に比べ約2ヶ月の工期短縮と35%の省人化を実現したことをお知らせいたします。

所在千葉県印旛郡酒々井町
発注者認定医療法人社団新虎の門会 酒々井虎の門クリニック
発注者支援日揮株式会社
工事請負株式会社古谷野工務店
工期2023年7月~2024年3月 ※健診棟は2024年4月21日にオープン
延床面積と建物用途2階建て(1階444㎡、2階218㎡)、延床面積662㎡の健診棟
建築上の新たな取組みと効果1. CFS建築の採用(壁・床):在来工法に比べ、2ヶ月の工期短縮と現場作業の35%の省力化
2.企画段階におけるBIMの活用:関係者間の合意形成の迅速化
その他1.一般社団法人日本CFS建築協会は、CFS建築の支援を担当
2.野原グループ株式会社のリノベ―ションカンパニーは、コンストラクションマネジメント(CM:Construction Management)に携わり、工事全体のコミュニケーションサポートとデジタル情報の連携支援を中心に、一般社団法人日本CFS建築協会の会員企業としてCFS建築に必要な躯体材等の納品を担当

先進建築手法とデジタル技術の採用背景(課題)

  1. 建設産業の就業者数の激減(人手不足)と高齢化
  2. 建設業への時間外労働時間の上限規制の適用(2024年4月~)
  3. 上記を踏まえ、建設の品質と生産性が両立に向けた建設産業の生産性向上とサプライチェーンの変革が急務(特に、医療施設は医療提供の場として地域の健康を支える拠点として重要であり、新設・改修・建て替えのいずれにおいても、建設の質とスピードが求められる)

先進建築手法とデジタル技術の採用効果

今回の「健診棟増築工事」では、上記の課題解決に向けた施策として、2階建て(1階444㎡、2階218㎡)、延床面積662㎡の建物であれば、以下の通り、CFS建築が工期短縮と省人化に効果があることを証明できました。

同時に、昨今の高層木造建築物ブームを鑑みれば、CFS建築での5階建て以上の高層化への対応や上下階の音を軽減する納まりに課題があることが分かりました。

1.CFS建築の採用(壁・床):在来工法に比べ、2ヶ月の工期短縮と現場作業の35%の省力化

CFS建築は、CFS(Cold-Formed Steelの略)と言われる板厚約0.8~6.0mmの冷間成形薄板形鋼を構造部材として使用する新しい建築工法を指します。モジュール建築 の一つで、プレファブリケーション建築に含まれます。
CFS建築は、次の通りの利点があり、工期と品質の両立を実現しやすい先進建築手法と言われています。

  • 建設現場の省人化・省施工が進み、環境配慮も同時に実現
  • 工事現場での造作が限りなく少ないため、作業員による仕上がりのバラツキをなくせる
  • 壁内結露を原因とする木材の腐朽やカビの発生とこれによる室内環境の汚染の心配が少ない(健診棟の利用者の安心)

今回の健診棟増築工事においては、在来工法(木造)に比べ、2ヶ月の工期短縮と現場作業の35%の省力化を実現しました。

CFS建築の採用による効果数値CFS建築の特長
在来工法(木造)に比べ
1.2ヶ月の工期短縮
2.建て方+内装間仕切工事にて、現場での作業が35%の省力化(人員削減)
3.現場の廃材処分費用を約4割削減
CFS建築では、
1.工場でのパネル作成(2×4スチールハウス)が、工事現場の造成、基礎工事期間に行えることから、造成・基礎工事の終了後に建て方を開始する従来工法に比べ、工期短縮が可能
2.建て方に関しても、クレーンによるパネルつり上げ作業で、現場の作業人員は少人数で可能
3.現場での建材加工が少なく、廃材量を削減、廃材処分費用の削減にも効果
■CFS建築で、工場で製作したパネル(2×4スチールハウス)をクレーンでつり上げている様子(2023年秋撮影)
■左:基礎工事の様子、右:建て方の様子(CFS建築のパネルを基礎上に設置)

2.企画段階におけるBIMの活用:関係者間の合意形成の迅速化

健診棟の完成イメージの合意には、仮想竣工したBIMモデルを活用しました。BIMモデルは3Dで立体的に目視確認できるので、関係者全員で外観や内装、動線を含む完成イメージを共有・確認しやすい利点があります。 実際、医療法人社団 新虎の門会酒々井虎の門クリニックの健診棟増築工事では、定例の企画会議(月1回の開催)でのモノギメが次回に繰越されることはほぼなく、迅速な合意形成・企画内容の確定が実現し、着工までのプロセスを円滑に進めることできました。

医療施設建設における従来の課題医療施設建設の企画段階におけるBIMの有用性
医療関係者と建設関係者間のギャップによる合意形成の難しさ

・医療関係者は多忙なことが多く、建設の企画に十分な時間を確保できにくい一方で、医療機器の配置、看護動線などを熟考が必要な項目が多岐にわたるうえ、建設図書(図面など)の見方には慣れていない。
・建設関係者は、建設の専門知識はあるが、医療機器の配置、看護動線などについては医療関係者の要望なしには企画が難しい。
建設イメージを3Dで立体的に目視確認できるため、医療関係者と建設関係者間のギャップを埋め、合意形成を容易にする

・医療関係者は建設図書(図面など)よりも分かりやすい3Dモデル(仮想竣工したBIMモデル)で、医療機器の配置、看護動線などを確認できる。
・建設関係者はパソコンがあれば、企画会議の場で医療関係者からの要望をその場でBIMモデル上に再現・可視化できるため、医療関係者の建設イメージを具現化しやすい。

工事発注者からのコメント(認定医療法人社団新虎の門会 酒々井虎の門クリニック)

■2024年4月21日にオープンした健診棟内部(認定医療法人社団新虎の門会 酒々井虎の門クリニック)

認定医療法人社団新虎の門会 酒々井虎の門クリニックは、千葉県印旛郡酒々井町にて開業以降、外来と健診を柱とし、治療と予防医療を展開しています。今回増築した健診棟は、病院と同等の医療機器を導入し、より充実した「予防医療から診断までできる医療施設」として地域の住民の健康と地域活性化をも担ってまいります。

1.デジタル技術活用による企画段階での合意形成のしやすさ

 パース、ゲームエンジンの利用により、各クリニックスタッフの「来院される患者様の健康のために」との想いや設計内容といった企画内容が可視化され、共通理解が促進されたことが良かったと思います。設計者の協力もあり、着工ギリギリまで意見を交換でき、「理想とする空間」を考えられたのも良かったです。

 実際、当初の2週間に1回、進みだしてからは1か月に1回の定例ミーティングは、内容が良く進みが良かったと感じています。例えば、各居室のスペーシングの協議も繰り返しながら行え、患者様やクリニックスタッフの動線イメージがつきやすかったです。

 今回、意思決定が早くできましたし、完成している空間のイメージと「こうしていきたい」との関係者の思いを繋ぎ、具現化できたことに満足しています(企画時点のイメージと完成後の空間にズレも少なかったですし、スタッフ動線が確保され無駄な動きがなくなりました)。

 何よりも、今までの医療空間とこれからの医療空間の違いを実感し、この建物を作って良かったと感じています。

2.早期の開業(工期短縮)について

 今回は、前述の通り、定例ミーティングの内容が充実していましたし、工程に沿ってクリニックの要望を明確に伝えられました。また、工期が早い方が決定事項のリミットが早いので何事も遅れることなく決めていくことができました。

 実際、工事が早く進むので、備品、医療機器等を早期に検討できました。

3.酒々井虎の門クリニックのスタッフの声

  • スタッフの裏動線が1本でつながっていて、診察、検査、検査、準備までがスタッフ専用ゾーンで共用されているので動きやすい。(スタッフの連携も取りやすい)
  • 病院は割と入り組んでいる作りが多いのですが、当クリニックの健診棟は中央通路が広く、柱が少いので、患者様を一目で見渡せるのが良いです(スタッフはもちろん患者様もわかりやすい)。
  • 各部屋の作りが大きく、見通しも良い空間になっているので、人の動きもシンプルになって見えやすく働きやすい。
  • 家具のスペースも十分になっている。
  • クリニック内の壁紙の種類もバラエティに富んでいて、患者様からの評判も良い。

BIM設計-製造-施工支援プラットフォーム「BuildApp」について ※登録商標取得済み

「BuildApp(ビルドアップ)」は、設計事務所やゼネコンが作成したBIM設計データをより詳細なデータに置き換え、各建設工程で必要なデータとして利活用し建設工程全体の生産性向上を実現するクラウドサービスです。設計積算から製造・流通・施工管理・維持管理までをBIMでつなぐ複数のサービスにより、各プレイヤーに合わせたサービスを提供します。そして、設計・施工の手間・手戻りをなくし、製造・流通を最適化して、コスト削減と廃棄物・CO2削減に貢献します。
「BuildApp」は、建設サプライチェーンの抜本的な効率化と未来へ繋がる成長をサポートし、皆さまと一緒に建設業界をアップデートしていきます。

私たちがBuildAppで実現したいこと

  • BIM起点のデータで建設関係者を繋いで連携を生む
  • 工程の可視化や業務の自動化により業界内の無駄を解消する
  • DX による生産性向上や廃材・CO2排出量の削減を目指す建設企業とともに、サプライチェーン を変革し、「建設DXで、社会を変えていく」

BuildAppのお問い合わせ先

BuildApp WEBhttps://build-app.jp/
フォーム入力https://build-app.jp/contact/
電話03-4535-1158

参考

  • BIM(ビム/Building Information Modelingの略称)とは
    建築物のデジタルモデルに、部材やコストなど多様な属性データを追加した建築物のデータベースを持たせ、設計・施工・維持管理の各プロセスを横断して活用するためのソリューションです。野原グループでは、2017年よりBIM事業に注力しています。
  • DfMA(Design For Manufacture and Assemblyの略)とは
    製造、組立容易性設計を言い、製造容易性および組立容易性を考慮して設計することを指します。
  • モジュール建築とは
    建築材料・家具などの規格化された組み立てユニットを用いた建築手法を言います。
  • プレファブリケーション建築とは
    あらかじめ部材を工場で生産・加工し、建築現場で加工を行わず組み立てる建築手法を言います。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
    経済産業省の定義によれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指し、単なるデジタル活用とは区別されています。
  • サプライチェーンとは
    商品や製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れのことをいいます。
  • 在来工法とは
    木造、RC造(鉄筋コンクリート)、SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート)、S造(鉄骨)などこれまで一般的に行われている建築工法を指します。
    今回の実績数値は、木造と比較しています。
  • 建て方(建前)とは
    現場で建物の主要な構造材を組み立てることを言い、土台の据付から柱、梁、棟上げまでの作業工程を指します。

関連リンク

資料

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野原グループ株式会社
マーケティング部 ブランドコミュニケーション課 (担当:森田・齋藤・萩谷)
E-Mail:nhrpreso@nohara-inc.co.jp