【産業DX総合展レポート】グループCEO野原弘輔、特別講演で「建設産業の変革ステップ」を語る

2025年8月8日 お知らせ
■2025年8月1日、産業DX総合展「特別講演」の様子

BuildApp(ビルドアップ/詳細は後述)で建設DXに取り組む野原グループ株式会社の代表取締役 野原弘輔は、2025年8月1日(金)に、産業DX総合展の特別講演に登壇し、「建設産業全体でDXを成功させていくために考えていきたいこと」をテーマに、日本の建設産業が抱える課題、建設DXの本質、建設産業の変革プロセスとBuildAppが目指す「データ連携による施工プロセスの革新(=工業化)」について語りました。

本特別講演では、ゲストスピーカーに、様々な業界における中堅中小企業のDX推進を支援されてきた、株式会社NTT DXパートナー 代表取締役の長谷部豊氏をお招きし、DXの本質について講話いたただきました。

特別講演を会場でご聴講くださった皆様、誠にありがとうございました。

(写真提供:株式会社NTT DXパートナー)

ゲストスピーカー 株式会社NTT DXパートナー 代表取締役 長谷部豊氏の講演内容

長谷部氏は、「DXの本質―圧倒的な勝ち筋をつくる―」をテーマに、DXの本質を「顧客視点で新たな価値を創出すること」と語り、DXを進めるうえで企業に必要な視点等について詳述されました。そして、DXの先にあるのは、これまでの大企業が牽引するピラミッド型の産業構造からネットワーク型の構造への転換であると言及されました。

株式会社NTT DXパートナー 代表取締役 長谷部豊氏の講演内容の詳細はこちら

野原グループ株式会社 代表取締役 野原弘輔の講演内容

1.建設産業の主な特徴

  • 重層下請構造:諸外国と比べても階層が深いが、景気の波や、建築技術の進歩に伴って専門特化することで対応してきた歴史の結果とも言えます。
  • 高い建築技術:顧客からの要求水準が高いこともあり、日本の建築技術は世界一だと言われていますが、バブル崩壊以降、コスト削減が最優先とされた影響で、建築技術も諸外国にかなり詰められている状況と言われています。

2.建設産業が抱える課題

次のとおり、建設産業を支えてきた前提は崩壊しつつあり、産業を取り巻く環境も変化しています。このまま需要が減り、労働の供給が減り、資材価格や労務費高騰といったコストが増える環境をそのまま受け入れているだけでは縮小均衡にしかなりません。縮小均衡というのは、すべての企業が等しく小さくなるのではなく、強みがある会社が残り、強みを持たない会社は淘汰されていくというのが、縮小均衡の一番のポイントであります。

  • 生産性の低さ:建設産業は、全産業における付加価値労働生産性平均の約60%にとどまっています(欧米でも建設産業の生産性は低い)。
  • 産業従事者の賃金の低さ
  • 重層下請け構造の弊害の顕在化:情報の分断によるコスト増、機能外注(専門的な業務や工程を外部企業に委託することで効率化を図る手法)によって技術・ノウハウが社内に蓄積しにくい状況が顕在化してきています。
  • 産業従事者の高齢化・若年層の不足:建設業の就業者は55歳以上が約34%、29歳以下が約11%と高齢化が進んでいます。60歳以上である約80万人の方は、この10年の間に続々と引退することも見込まれ、2035年には、建設業界全体で約90万人の働き手が不足すると予測されています(国土交通省発表)。これらの結果として、外国人労働者が増加していますが、諸外国との人材の奪い合いが激化しています。
  • 外部環境の変化への対応:建設需要の鈍化(縮小)、環境負荷軽減など、建設産業が求められる事項は変化しています。

3.転換期を乗り越えるためにするべきこと

■建設産業の転換期を乗り越えるための3つの基本戦略

建設産業の転換期を乗り越え、新たなビジネスに組み立て直すために我々が考える基本戦略は3つで、重要と考えるものから順に以下の通りです。

  • 生産性の向上
  • 生産性を向上したうえでのコストマネジメント、透明性のあるコスト管理
  • 様々なステークホルダーとの役割分担、関係性の再構築

4.解決の具体策としての「建設産業でのデジタル化、モジュラー化」と野原グループが進める「BuildApp」

我々が考える、建設産業の変革のステップを以下に示します。

  • Lean Construction(リーン建設):最も大事な考え方で、建設版のトヨタ生産方式といったところでしょうか。必要なものを必要な時に必要な量だけ作る。 建築で言うと、手戻りがゼロな状態です。
  • IPD(Integrated Project Delivery/統合プロジェクトデリバリー):発注者、設計者、施工者が一体となって共同して成果を共有するプロジェクト方式です。
  • デジタル化・標準化
  • モジュラー化(Modularization):これまでのように、すべてを一品生産する、すべての建築物を独立して有名に作るのではなく、 できるだけ繰り返しの要素を入れていきます。 そうすることで、現場で作るのではなく工場で作れる要素を増やし、現場での作業自体を減らすことができるようになります。 これは特に人手不足の環境下では極めて重要な考え方だと思っております。

海外では「リーンコンストラクション」が非常にキーワードになってきています。リーンコンストラクションはデジタル化などのトレンドと相性が良いからだと認識をしていますが、ここでも重要になるのが「IPD」という統合プロジェクトデリバリーという考え方です。

IPDの1番のポイントは、関係者を早期に巻き込んでいろんなものを前倒しで決めていくことです。ただ、私は、日本ではこのIPDのような新しい建築の進め方に急転換をするとは思っておりません。 その背景には、いろいろ理由があると考えており、例えば現状の一般的な工事契約形態ではゼネコンが工事受注者として全部リスクを負うので、工事発注者がどれだけゼネコンがリスクを取っているかが分かりにくいのです。その結果、工事発注者は工事契約を変えることに対する抵抗感が非常に強い。そういった中で、私たちが考える一番のポイントは、関係者間でプロジェクト情報をきちんと統合していく、情報としてすり合わせ、見えるようにしていく可視化です。

私たち野原グループでは、今「BuildApp(ビルドアップ)」という建築プロセスにおける、関係者をデータでつなぐ仕組みを提供しております。 建設DXのサービスは数多く出てきていますが、BuildAppは 日本でも数少ない、「リーンコンストラクション」「IPD」「標準化」「モジュラー化」に向けた、極めて実用的な取り組みだと自負しております。

5.建設DXの課題

建設DXにおける現時点での日本の課題は2つあると考えています。

1つは共通ルールがないことです。BIMの活用においても、企業ごと、場合によっては現場ごとにルールが異なるのでデータの互換性が取れない、 情報が集まって分解分析して次の改善につなげるフィードバックループがつながりにくい、といった事象が起きています。

もう1つがEIR(Employer’s Information Requirements/発注者情報要件)と呼んでいますが、発注者が建設のプロジェクトを発注するときにこういう情報を出してください、 こういうふうに作ってくださいという要求事項の提示をする発注者が非常に少ない。発注者がどういったことを本当にその建物でやりたいのか、 どのようにデジタルの技術を使っていきたいのか、竣工後にどのように使っていきたいのかを建てる前に明確にすることで、EIRも明確になっていくと思っております。そのためには、ガイドラインをきちんと取り決めたり、EIRを多くのプロジェクトで使っていただけるように啓蒙したりということが必要になると思います。

6.BIM浸透の3つの課題と対策

これからの時代、建設プロジェクトにおいてBIM(Building Information Building)の考え方なしに進まないと考えています。 BIMは単なるソフトではありません。CADの延長だと考えると必ず間違えます。 BIMはソフトというよりはむしろ考え方だと思っていただくのが良いと思います。
または、BIMは建設現場でIPD、標準化、モジュラー化を活用するための道具だと捉えていただけると良いと思っています。

しかし、国内建設産業では、BIMが浸透しているとは言えない状況です。

我々が考えるBIM浸透の課題は3つあります。(解決策も併記します)

  • 設計変更の頻発:設計変更が発生すると、工事受注者は追いかけて対応しなくてはいけないということがあります。
    これに対しては段階的な標準化、設計プロセスの高度化、フロントローディングで、前段階でどんどん決めていくということが必要です。
    私ども「BuildApp(ビルドアップ)」ができることとしては、 発注者、設計者にいろんな価値を提供するとともに、様々な工程情報を結合する、情報をつなげることです。 これにより「追っかけ対応」がなくなっていきます。
  • 手戻り作業の常態化:手戻り作業が常態化すると、コストアップ、工期遅延といった関係者への悪影響が発生します。解決の方向性としては、現場従事者への情報伝達の最適化が考えられます。ただ情報をスムーズに伝えるというだけではなくて、 情報を早く伝える、またはこれからはだんだんとそれを予測して伝えるのです。そのためには、情報ハブ(CDE+α)が必要になります。設計やゼネコンだけでなく、「誰もが参加可能なプラットフォーム」で、サブコン、建材メーカー、物流会社までつなげることです。我々のBuildAppは、日本型リーン/IPD転換への一役を担うため、各プレイヤーがBIMを徹底的に活用できるプラットフォームを提供し、建築プロセス、ステークホルダーを繋ぐハブとなりたいと考えています。
  • 発注者側の人材不足・設計変更が反映されない契約構造:問題の解決の方向性としては、コストの見える化、契約形態の見直し、発注者・受注者の意識改革が必要になります。 ここについては、私もまだ全然取り組みが十分ではないと思っていますが、透明性の確保、最適化に寄与したいと考えており、様々な業界団体との連携、発注者の啓発、こういったところに取り組みたいと思います。

最後に

野原グループの「BuildApp(ビルドアップ)」は、日本でリーンな建設プロジェクトを増やすために、BIMを120%活用するために、建設プロジェクトに参加する全ての人が 参加できるようなプラットフォームを提供します。 BuildAppは建築プロセス、ステークホルダーをつなぐハブを目指します。

また、野原グループには、BIMの人材に特化をした派遣・紹介事業を展開する「BA-plus株式会社」があります。 皆様の中でBIMをさらに進めたい、これを広げたいと思われている方がいれば、 ぜひお声掛けいただければ幸いです。

最後になりますが、本日のゲストスピーカーであるNTT DXパートナーの長谷部氏からも言及されましたとおり、大企業が牽引するピラミッド型の産業構造から、ネットワーク型の構造への転換というのは、建設産業でもできると思っております。ヒエラルキーがきつい重層下請構造ではなくて、よりオープンに、信頼関係に基づくパートナーシップによりプロジェクトが出来上がっていくと、生産性が高い建設産業になってくるのではないかと考えております。

■講演中の様子

BIM設計-製造-施工支援プラットフォーム「BuildApp」について ※登録商標取得済み

「BuildApp(ビルドアップ)」は、設計事務所やゼネコンが作成したBIM設計データをより詳細なデータに置き換え、各建設工程で必要なデータとして利活用し建設工程全体の生産性向上を実現するクラウドサービスです。設計積算から製造・流通・施工管理・維持管理までをBIMでつなぐ複数のサービスにより、各プレイヤーに合わせたサービスを提供します。そして、設計・施工の手間・手戻りをなくし、製造・流通を最適化して、コスト削減と廃棄物・CO2削減に貢献します。
「BuildApp」は、建設サプライチェーンの抜本的な効率化と未来へ繋がる成長をサポートし、皆さまと一緒に建設業界をアップデートしていきます。

私たちがBuildAppで実現したいこと

  • BIM起点のデータで建設関係者を繋いで連携を生む
  • 工程の可視化や業務の自動化により業界内の無駄を解消する
  • DX による生産性向上や廃材・CO2排出量の削減を目指す建設企業とともに、サプライチェーン を変革し、「建設DXで、社会を変えていく」

BuildAppの新サービス「BuildApp 内装 建材数量・手配サービス」が2月より商用提供開始

「BuildApp 内装 建材数量・手配サービス」は、建材発注数量の算出や施工情報の自動アウトプットができる内装仕上工事向けのサービスです。

BIMで内装仕上工事に必要な建材手配に関わる業務を効率化し、無駄を省いた効率的な材料手配を実現します。 2025年2月3日より商用提供を開始し、「建築プロジェクトでBIM化が遅れている内装仕上工事」を情報マネジメントの観点から変革する第一歩を踏み出しました。

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参考

  • サブコンとは
    「subcontractor(サブコントラクター)」の略称で、一般的に、元請業者(ゼネコン)から工事を受注する下請業者のことを指します。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)とは
    経済産業省の定義によれば「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」を指し、単なるデジタル活用とは区別されています。
  • サプライチェーンとは
    商品や製品が消費者の手元に届くまでの、調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費といった一連の流れのことをいいます。

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